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技術解説 オペアンプの種類

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オペアンプの種類

オペアンプ(演算増幅器)は、便利なアナログ増幅器ですが、トランジスタ、抵抗、コンデンサなど個々のディスクリート部品で作ることは無く既に集積回路(IC)化された部品を利用するのが一般的です。オペアンプの半導体ICとしての歴史は古く半世紀以上に及び、日本国内でも1970年代後半に多くの半導体メーカより製品化されました。トランジスタを使用して演算増幅回路を構成するには、バイアス回路、位相補償なども配慮し複雑になりますが、既にメーカで完成した回路部品として用意してあるのでユーザは、使用目的に適合する製品をチョイスするだけで良いのです。

使用目的別オペアンプの種類

オペアンプは、1960年代に米国Fairchild社で開発された741タイプと呼ばれる製品をベースにしています。その後、セカンドソースや目的別に変遷、改良した様々な製品が生まれ現在では、オペアンプICには下記のような種類があります。

汎用オペアンプ
基本となるオペアンプで、様々な使用を想定し使い易さ優先した低価格な汎用品です。
●最もオーソドックスな741タイプ、LM301タイプ
●低ノイズ、広帯域の558タイプ
●単電源で使用できる358、324タイプ
●高SN比のFET入力方式のTL07Xタイプ
高精度タイプ
オープンループゲインが高くAnalog device社のOP07が有名です。
計測器やアナログセンサーなど微小電圧を増幅するためにオフセット電圧や熱ドリフト特性を改良したものです。
ローノイズタイプ
458、558タイプをベースに低雑音、広帯域、低歪率特性を改良したものでオーディオ、無線、産業用などノイズを嫌う用途向けのオペアンプです。
高速オペアンプ
無線、映像用など高周波まで使用できる製品で高いGB積、高スルーレートが特長ですが、あまり高いゲインでは使用できません。
微小電流オペアンプ
アイソレーションアンプ、フォトダイオード暗電流、C容量測定などの極微小電流の変化計測用途に作られた製品で入力バイアス電流がfAクラスです。
このタイプは、入力トランジスタにバイポーラでは無くFETを使用しています。
パワーオペアンプ
大電力が扱えるオペアンプで、スピーカやモータを直接駆動する大きな電流能力があります。
ローパワーオペアンプ
電池を電源とするモバイル用途向けなどに低消費電流に拘った製品です。
現在は、バイポーラよりも低電圧、低消費電流が特長のCMOSでの開発が主軸です。
Rail-To-Railアンプ
入力電圧と出力電圧(もしくはどちらか)の信号レベル許容範囲が電源電圧まで動作可能なもの。
低エネルギーでエコ環境が重要視される時代になり、より低電圧電源での使用用途が増えており、急速に需要が増えています。
完全差動オペアンプ
入力、出力端子各々が差動のオペアンプで高精度アナログ回路用途などに使用され
入力、出力回路各々に正負の端子があります。
計測器用途やRS422/485など伝送線長の長いインターフェース用途の送受信回路、IC内部の高精度アナログ処理回路などで良く使用されています。
入力トランジスタの種類による違い

差動入力段に用いられるトランジスタの種類、極性による特長差があり、使用用途別に使い分けします。

バイポーラ
入力段がバイポーラトランジスタで構成されている基本オペアンプです。
電流増幅器であるバイポーラトランジスタを使用しているため素子特性のばらつき差が少なく(差動のペア性が良い)入力オフセット電圧が小さいことと低ノイズに優れています。
JFET入力
入力段にジャンクションFETを使用したオペアンプです。
高入力インピーダンス、少ない入力バイアス電流、高スルーレートが特長です。
JFETは素子特性のばらつきが大きく、入力オフセット電圧はバイポーラに比べ大きくなるため、オフセット調整端子が付加されたものがあります。
CMOS入力
入力段にCMOSを使用したオペアンプです。
高入力インピーダンスで、入力バイアス電流がほとんど流れないことが特長。
JFET以上に素子特性のばらつきが大きく、入力オフセット電圧は大きくなります。
また、電荷Gate構造のため、SN比、熱雑音、熱ドリフト特性などがバイポーラに比べて劣ります。
最近では、改良でオフセットや雑音性能にも優れたものが出来てきています。
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