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ブラシレスモータ:ホールモータの駆動技術

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ブラシレスモータ:ホールモータの駆動技術

この回はローターの位置検出方法として一般的なホールセンサーの種類と特性、 ブラシレスモータの各相コイルの通電パターンとホールセンサー出力の関係、および 精度や効率向上のためのモータコイルの電流検出について説明します。

15章 ブラシレスモータのセンサモータ駆動技術

ブラシレス・ホールモータ駆動技術

前章vol.15でブラシレスモータ制御のさわりを述べました。 本章では、中小型のブラシレスモータで最も多く使用されている ホールセンサを取り付けたホールモータの制御について解説します。

ホールモータの仕組み

ブラシ付きモータは、コミュテータとロータは一体構造であり 自動的に電気通電位相が機械的に切替え制御されるので ロータ(巻線コイル)位置がどこにあるかを気にする必要はありません。 しかし、ブラシレスモータの場合は、 ステータ(巻線コイル)とロータ(永久磁石)は非接触でありロータ位置がわかりません。 また、正確にステータとロータとの適正磁束関係になるタイミングで位相通電を行わないと 適切なトルクが得られませんし、最悪モータは回りません。

そこで、様々な方法でロータ位置を検出する仕組みが考案されてきましたが、 現在、最も普及しているものが、磁気センサであるホールセンサを取り付けて 電気的にロータの永久磁石のS/N極の正確な位置を検出する仕組みです。 これをホールモータと呼んでいます。

モータへのホールセンサの取り付け

ホールセンサは、下図のように1回転360度(電気角)内に3個配置します。

ホールセンサ信号は、下図の様に1回転360度(電気角)内で 60度毎に0か1の符号でロータの正確な位置(磁極)信号が得られます。

このホール信号のタイミングに合わせて、 ドライブ回路からコイル通電制御を行えば、適切な同期位相制御が出来ます。

ホールセンサ

ホールセンサは、ホール効果を利用し磁気を検出し電気信号に変換する素子です。

ホール素子の構造

ホール素子は、半導体で磁気反応薄膜固体を形成します。 DC電源をV+~V-端子間にバイアスしておき、 薄膜固体表面に対し垂直方向に磁界を与えた時に、 ローレンツ力を受けた薄膜中を流れる電荷の経路が変化して生じる電位差(=ホール効果)を利用したものです。 VH+、VH-端子間の電位差を測定することで電気的に磁束信号が得られます。

ホール素子の物理式 磁界を与えた場合のホール電圧は、次式で表されます。

VH+~VH-端子間差電位差(V) = KμVCB+Vo
K: 比例定数
RH: ホール係数(1/e/n: n=キャリア濃度、e:電荷量)
d: 薄膜厚
Vc: 電源(バイアス)電圧
B: 印加磁束密度
μ: キャリア移動度
Vo: 不均衡電圧
ホール素子の特性

ホール素子のホール出力電圧と磁束密度の関係を示します。 InSbホール素子は磁場に対する感度が高い性質があります。 GaAsホール素子は感度が低いですが、磁気変化に対する直線性に優れます。

ホールセンサの種類

構造材料の違いや回路構成により3種類あり、その特長を述べます。

①InSbタイプホール素子
InSb(インジウム・アンチモン)で薄膜形成した高感度なホール素子です。 感度が高いため、素子面積を小さくして比較的小型な素子が作れます。
②GaAsタイプホール素子
GaAs(ガリウム・ヒ素)で薄膜形成しした素子です。 InSbに比べ感度は低いのですが、 磁気変化に対してホール電圧の直線性に優れます。 動作温度範囲が広く(-40℃~125℃)、周囲温度に対しホール電圧のドリフト量が小さいのも特長です。
③ホールIC
ホールICとはホール素子と信号変換回路を1つのパッケージに組み込んだ磁気センサです。 最もシンプルな構成は、ホール素子と差動コンパレータで構成されており、 ノイズの影響を受けやすい弱い微弱なホール信号の処理をIC内部で行います。 外付け部品が不要になる上、 ノイズの少ない安定した0or1のデジタル信号が簡単に得られるので使い易いセンサです。
ホールモータ120度通電回路の構成

下記にホールIC出力とモータ各相コイルの通電電流波形を示します。 「6ステップ区間の繰り返し」パターンで位相が進んでいくことがわかります。

下記に基本的なホールモータ制御回路のブロック図を示します。

通電位相角の違い

3相ブラシレスモータの位相通電方法としては、 120度位相差による矩形波通電法と180度位相差による正弦波通電法があります。

矩形波通電と正弦波通電の特長を述べます。

①120度矩形波通電
元々、120度通電は、DCブラシ付きモータのブラシの役割を スイッチ素子の位相タイミング制御に置き換える発想で考えられました。
磁束磁石が1回転(360度)する期間を6つの区間に細分化し それぞれの区間で最もトルクが発生する2相のコイルに通電(残り1相は無通電)することになります。 回路構成は比較的シンプルで良いのですが、 通電するコイルと通電しないコイルが60度ごとにダイナミックに切り替わるので 切替えの瞬間にショックが大きくトルクリップルが大きくなり振動を生じる欠点があります。
②180度正弦波通電
正弦波駆動は、3相コイルへそれぞれ電流を滑らかに分配することで 磁石磁束がどの位置にあっても、常に一定トルクを発生させる損失の少ない駆動方法です。 120度通電に比べトルクリップルを低減し回転子への振動を抑制できますが、 制御は複雑になります。
高性能制御化にはモータコイル電流検出/制御も重要

モータを精度良く、効率良く制御するには、モータコイル電流を計測し サーボ制御系コントローラへフィードバックする必要があります。

電流制御の具体的な目的を下記に挙げます。

①より高性能な制御を行うため
負荷変動などの外乱要因の過渡現象に対し安定して応答性良く、 高効率で運転するには、精度の良い電流計測によるトルク制御が必要です。
②過負荷保護機能のため
過負荷による過大電流などによる故障保護の目的です。

一般的に下記の回路の様なシャント抵抗を用いて各相コイルの電流を検出し 制御器にフィードバックする方法を取ります。

各3相コイルの電流を各々を検出する3シャント方式

各3相コイルの電流を束ねて検出する1シャント方式

回転数/トルクの制御

ブラシレスモータは、DCブラシモータと同じく モータコイルに流す電流量を制御することでモータの回転速度(トルク)を制御できます。

シンプルな120度通電での電流量の増減は、 ドライブ回路のHi-side側をPWMスイッチングし、 PWMデューディを制御することでモータ速度(トルク)の制御が可能になります。

180度正弦波通電では、ドライブ回路のHi-sideと対になる Lo-sideの同期整流PWM制御が必要になります。 従って、120度矩形波制御回路よりも複雑になり、 より高速な処理能力が必要です。

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